
色の検定はいくつかありますが、その中で最も権威性があるのは「色彩検定」です。とはいえ、資格を取得すれば、誰でも就職に有利になるということはありません。
正直な話、履歴書に「色彩検定取得」と記載しても、全く興味をもってもらえない業種や企業もあります。ただその一方で高く評価され、資格手当がもらえる企業もあります。
このように業界によって大きく評価が分かれるのが色彩検定。では、どんな業界での評価が高いのか?また、色彩検定を持っていると有利に働く職業はあるのか?「色彩検定と仕事」という視点で現役カラーリストが解説します。
1.色彩検定は就職に有利?
色彩検定に合格するとカラーコーディネーターになれる?
よく「色彩検定に合格したらカラーコーディネーターやカラーリストになれる」と思われている方がいますが、これは誤解です。そもそも、これらの職業をするために資格は必要ありません。もちろん色の知識は必要ですが、それよりも実力、実績、人との繋がりなどが評価される世界なのです。そのため、実際にカラーコーディネーターとして活躍している人の中には色彩検定をもっていない方も多くいます。
色彩検定はどんなビジネスシーンで役立つ?
ただ、カラーコーディネーターになれないから色彩検定は意味がないのかというと、それは違います。色の知識は、一見、カラーと関係なく見える職業にも役立ちます。例えば下記の様なビジネスシーン。
・商品の企画や開発をする時
・広告やポスターのアイデア出しをする時
・プレゼン資料やチラシを作成する時
たとえカラーとは関連のない業界であっても、仕事において色の知識はとても役立ちます。プレゼン資料が見やすいことで、仕事ができると評価されることも大いにあります。そういう意味で色彩検定は仕事に有利です。資格を持っている方は、履歴書に記載したり、普段からアピールして仕事に繋げていきましょう。
履歴書に書けるのは何級から?


色彩検定には、1級(上級)、2級(中級)、3級(初級)とUC級の4つの級がありますが、履歴書には何級からでも記載できます。
色彩検定の4つの級の中で、1級は格別の権威性があります。名刺に載せることでクライアントからの信頼度が高まることも多いですし、企業によっては、1級取得者でないと取引をしないという所もあります。とにかく、カラーコーディネーターやカラーリストとしてフリーランスで仕事をする場合は、1級取得は必須と言えます。また1級を取得すると、色彩検定認定の色彩講師の道も開けます。
2.色彩検定を持っていると有利な業界
色彩検定の取得を高く評価してくれる可能性が高い業界は以下の様な業界です。


・美容業界: 化粧品の色選びやヘアカラーの提案
・印刷業界: 印刷物の色調整や、色に関するトラブルシューティングの対応
・建築業界: 建物の外壁や内装の色選び、照明計画や空間全体の計画など
・食品業界: 食品のパッケージデザインや、食欲をそそる配色計画など
・ファッション業界;ファッションのコーディネートのアドバイス、陳列、ディスプレイ計画など
・流通業界:商業施設の運営、店舗の内装計画、販促計画など
これらの業界は特に色彩感覚が問われるため、たとえ試験を受けなくても、テキストを読み込んで色の知識をつけておくだけでも、十分仕事に役立つと思います。更に資格取得をしておけば、就職の際には有利に働く可能性が高いと言えます。
3.色彩検定が武器になる職業
さらに絞り込んで、職業に目を向けると、色彩検定を持っていることが武器になる仕事があります。それが色を扱う職業です。具体的には以下の様な職業です。
①色彩講師
色彩講師は、色の知識を大学や専門学校、企業研修などで伝える職業です。色彩講師になるには様々なルートがありますが、その一つに色彩検定1級に合格すると開かれる「色彩検定協会認定の色彩講師」の道があります。
色彩検定協会の認定講師になる方法
認定講師養成講座は1級合格者が誰でも受講できるわけではありません。まずレポートの提出が求められ、そこを通過した人のみが受講できるという制度です。
色彩検定協会の講師養成講座は、厳しい事としても知られており、毎回のレポート提出や模擬授業の実施に加えて、最後の認定試験まで合格しないと認定はもらません。現役の講師でも苦戦すると言われている通り、なかなかハードな内容の様です。ただその分、認定試験に合格すれば、色彩講師としてのレベルが高いことが保証され一種のステータスになる資格です。専門学校や大学で色彩講師として教鞭をとるには、コネクションがないと難しいという現実があります。そんな中で、知り合いがいなくても色彩講師に慣れる可能性が開けるのがこのルート。1級取得者で本気で講師を目指すなら検討するに値する方法です。
色彩検定協会認定講師養成講座の特徴と費用
講座の特徴は、講師陣が日本の色彩界の第一人者であること。色彩検定のテキストを執筆されている方々が主に講座を担当されているため、トップレベルの知識を学ぶことができます。
講座は、全12回で費用は258,500円(受講料 235,000円 + 消費税 23,500円)。ここに加えて、色彩検定1級~3級、UC 級のテキストが必要となります(2025年1月現在)※詳しくは色彩検定協会のHPでご確認ください。


最後に注意点がひとつあります。色彩検定協会だけの話ではなく、認定講師養成講座すべてに言えることですが、認定を受けたからと言って仕事が紹介されるわけではありません。認定はあくまでも実力を保証してくれるものであり、実際の仕事は自分で開拓する必要があります。そのため、その資格は本当に必要なのか?内容と料金を精査することが大切です。ただそんな中にあっても、この色彩検定協会の「色彩講師養成講座」は、たとえ仕事に繋がらなくても講師のスキルと知識を磨くという意味で価値ある講座だと思います。チャンスと色に対する情熱があれば、ぜひ!
色彩検定協会以外の講師養成講座
色彩検定協会以外にも、色彩講師養成講座を開講している団体があります。その中から、メジャーな2つの協会の講座を紹介します。
① J-color講師認定プログラム
一般社団法人日本カラーコーディネーター協会(J-color)が主催する講師養成講座。色彩検定協会の講師養成講座が、色彩講師として広く活躍する人を育成するという内容であったのに対して、こちらはJ-colorの「検定対策講座を教える権利が認められる」という意味合いが強い講座です。コースは2種類あり、色彩学を扱う「色彩活用ライフケアカラー検定2級認定講師養成講座」とパーソナルカラーに特化した「色彩活用パーソナルカラー検定2級認定講師養成講座」があります。
講座は、どちらも全8時間。費用は7,7000円。それぞれ、色彩活用ライフカラー検定2級、色彩活用パーソナルカラー検定2級を取得していることが必須条件です。
講座受講のためには、検定2級に合格していることに加えて、簡単な面談があるようです。認定講座内で模擬授業を行い、それが最終の試験として評価されます。認定講師になると、公式テキスト、問題集などが割引価格で購入できるメリットあり。
②日本パーソナルカラー協会認定「JPCA講師養成講座」
NPO法人 日本パーソナルカラー協会(JPCA)が主催する、パーソナルカラーに特化した講師の養成講座。こちらも、JPCAの検定対策講座を教える権利が認められるという意味合いの強い講座。
講座は、全2日。費用は123,200円(税込)(内訳:受講料 110,000円+講師認定試験料13,200円)。別途、属性スケールドレープ(39600円)が必要。色彩技能パーソナルカラー検定モジュール3合格が必須条件
②イメージコンサルタント
イメージコンサルタントは、クライアントのお客様のファッションをトータルにコーディネートする仕事です。パーソナルカラー診断、骨格診断、顔タイプ診断などを駆使して、その人の個性が引き立つファッションを提案します。色彩検定は、イメージコンサルタントになるための必須の資格ではありませんが、持っているとかなり有利になります。


色彩検定はどう役立つ?
色彩検定は以前、「ファッションカラーコーディネーター検定試験」と呼ばれていました。”ファッションの配色や色づかいを教育する”というのが検定の始まりだったためです。そのため、他の色の検定と比較すると特にファッションに強い検定といえます。具体的には以下の様な内容が学べます。
お客様から信頼されるために、色の資格はあった方が有利です。何級でもいいですが、できれば色のスペシャリストである1級を目指したいところです。
③インテリアコーディネーター
インテリアコーディネーターは、住む人に合わせた最適なインテリアプランを設計したり、アドバイスする仕事です。主要な仕事にカラーコーディネートの提案が含まれているため、色彩検定は非常に役立ちます。
④ デザイナー
グラフィックデザイナー、Webデザイナー、ファッションデザイナー、プロダクトデザイナーなど、どんな分野であれデザインを考える時は、色の知識は必須です。色彩検定は、色彩感覚に理論の裏付けをしてくれる役割があります。デザイナーをめざすなら、必ず学びたい検定と言えます。


コメント